部屋が「ゴミ屋敷の手前」の状態で止まっている、あるいはゆっくりとゴミ屋敷へと向かっている時、その背景には住人の複雑な「心理」が深く関係しています。なぜ人は物を溜め込んでしまうのか、なぜ片付けられないのか。この心理を理解することで、問題の根源にアプローチし、悪化を防ぐためのヒントを見つけることができるでしょう。物を溜め込んでしまう心理の主なものとして、まず「過去への執着と喪失感」が挙げられます。一つ一つの物に、過去の思い出や、かつての自分、亡くなった人との繋がりを感じており、それを手放すことは、過去を否定すること、あるいは大切なものを失うことだと感じています。特に、孤独感や喪失感を抱えている場合、物が唯一の心の拠り所となり、手放すことへの強い抵抗感を生み出します。次に、「将来への漠然とした不安」も大きな要因です。「いつか使うかもしれない」「これがないと困るかもしれない」という思考が、物を手放すことを躊躇させます。特に、経済的な不安や生活への不安を抱えている場合、物が保険のような役割を果たしていることがあります。これは、不測の事態に備えたいという人間の本能的な欲求が過剰に現れている状態とも言えるでしょう。また、「自己肯定感の低さ」も関連しています。自分の価値を物で測ってしまう傾向があり、多くの物を持つことで、自分は豊かである、あるいは満たされていると感じようとすることがあります。物を手放すことは、自分自身の価値が下がるような感覚に陥り、自己肯定感がさらに低下することを恐れるため、捨てられないのです。片付けを促されることが、自分の生き方や価値観を否定されるように感じ、反発することもあります。さらに、「完璧主義」の心理も隠されていることがあります。完璧に片付けようとするあまり、どこから手をつけていいか分からなくなり、結局何も始められないというケースです。すべてを一度にやろうとする思考が、かえって行動を阻害してしまうのです。これらの心理は、一つだけでなく、複数絡み合っていることがほとんどです。ゴミ屋敷の手前にある部屋の状況は、その住人の内面世界を映し出す鏡とも言えるでしょう。この心理を理解し、頭ごなしに物を捨てることを強制するのではなく、まずは住人の心に寄り添い、信頼関係を築くことから始めることが、問題解決への第一歩となるでしょう。
ゴミ屋敷手前の心理理解!なぜ物は増え続けるのか