ゴミ屋敷の自力片付けにおいて、特に心理的・衛生的なハードルとなるのが、食べ残し、腐敗物、排泄物、害虫やネズミの死骸といった「汚物」の処理です。これらは悪臭や病原菌の発生源となり、作業者の健康を著しく損なう可能性があります。汚物を自力で処理する際には、徹底した注意と準備が必要です。まず最も重要なのは、厳重な「防護」です。通常のゴミ袋やマスク、手袋だけでは不十分な場合があります。厚手のゴム手袋を重ねて着用し、使い捨て可能なエプロンやレインコートなどで衣類を保護します。足元も、長靴や丈夫な靴を履き、汚物が付着しないように注意します。顔面を守るために、顔全体を覆うフェイスシールドや、ゴーグルと防じんマスクを組み合わせるなど、可能な限り露出を減らします。換気も非常に重要ですが、悪臭が外に漏れ出さないよう、作業中は窓を最小限に開けるか、高性能な空気清浄機やファンを使用するといった工夫も必要かもしれません。汚物処理に使う道具は、使い捨てできるもの(新聞紙、キッチンペーパーなど)を中心に準備し、終わったらすぐに処分します。汚物を拭き取る際は、こすり広げないように注意し、内側へ畳み込むようにして拭き取ります。腐敗した食品や液体は、密閉性の高い丈夫なゴミ袋に厳重に入れ、空気を抜いて二重、三重に縛るなどして、悪臭が漏れないようにします。液体状の汚物は、新聞紙や吸水性の高いものに吸わせてから袋に入れると、漏れを防げます。害虫やネズミの死骸を見つけた場合は、直接触らず、ホウキやトングなどで集め、厚手のビニール袋に入れて密閉し、早めに処分します。駆除作業と並行して行うことも重要です。汚物を撤去した場所は、徹底的に清掃・消毒する必要があります。床や壁に染み付いた汚れは、洗剤や重曹、クエン酸などを使って丁寧に拭き取ります。その後、アルコール消毒液や次亜塩素酸ナトリウム(家庭用漂白剤を希釈したものなど)を使って消毒を行います。次亜塩素酸ナトリウムを使用する際は、換気を十分に行い、酸性のもの(酢やクエン酸など)と絶対に混ぜないように注意が必要です。消毒液を吹きかけた後、しばらく置いてから拭き取ることで、より高い効果が期待できます。汚物処理は、精神的にも肉体的にも大きな負担を伴う作業です。