ゴミ屋敷問題の背景に「認知症」が深く関わっている場合、その解決は一層複雑でデリケートなものとなります。認知症が進行すると、物の価値判断や整理整頓の能力が低下し、ゴミとそうでないものの区別がつかなくなったり、物を溜め込む衝動が強まったりすることがあります。このような状況において、「地域包括支援センター」は、認知症の専門知識を持つスタッフが中心となり、きめ細やかな専門支援を提供することで、問題解決に不可欠な役割を担います。地域包括支援センターは、まず「認知症の早期発見と診断への橋渡し」を行います。ゴミ屋敷の住人である高齢者に認知症の兆候が見られる場合、認知症サポート医や専門医療機関への受診を強く勧め、診断へと繋げます。正確な診断は、その後の適切なケアプランを立てる上で非常に重要となります。認知症の進行度合いや症状に応じて、薬物療法や非薬物療法などの医療的介入を促します。次に、「認知症に特化したケアプランの策定と実施」を行います。認知症の高齢者の場合、単にゴミを撤去するだけでなく、その人がなぜ物を溜め込んでしまうのかという行動心理を理解した上でのアプローチが求められます。地域包括支援センターは、ケアマネジャーを中心に、認知症の症状に合わせた片付け支援(例えば、一度に大量の物を処分せず、少しずつ整理する、本人の意向を尊重しながら物を仕分けるなど)、認知症対応型サービス(認知症対応型共同生活介護、小規模多機能型居宅介護など)の導入、居宅介護支援事業所との連携を通じて、住まいと生活全般の質の向上を目指します。さらに、「権利擁護と成年後見制度の活用支援」も重要な専門支援です。認知症の進行により、財産管理能力が低下し、悪質な業者に騙されたり、不要な物を高額で購入してしまったりするリスクが高まります。地域包括支援センターは、こうした高齢者の権利を守るため、成年後見制度(法定後見、任意後見)の利用を支援したり、消費者被害の相談に応じたりします。ゴミ屋敷化の状況によっては、判断能力の低下が進んでいると判断され、速やかに成年後見制度の利用を進める必要が出てくることもあります。そして、「家族への支援と情報提供」も欠かせません。